時価変動による財務リスク
当社は、2020年3月末現在、貸借対照表計上額で約86億円の政策保有株式を保有しています。2020年3月期には、政策保有株式の時価変動が当社の貸借対照表に20億円超の影響(株式数の増減による影響控除後)を与えています。なお、2020年3月期の当社の当期純利益は66億円であり、時価変動の影響は当期純利益の約1/3に相当します。このように、政策保有株式は時価の変動によって、当社の財務状況を不安定化させています(議決権行使助言会社の政策保有株式に関する考え方について、トピック1もご参照ください。)
(出所:有価証券報告書より弊社作成)
不透明な理由で保有される政策保有株式
当社の有価証券報告書によれば、政策保有株式の保有目的は、「事業上の関係を勘案し、同社との良好な関係の維持、強化を図るため」と説明されていますが、株式を保有することと、良好な関係が維持、強化されることの因果関係が理解できません。
また、当社は競合であるシャッター業界1位の三和ホールディングス(以下「三和HD」といいます。)株式も政策保有株式として保有しています。競合他社の株式を保有することで維持、強化が図られる「良好な関係」とは何なのか、理解に苦しみます。
シャッター業界における過去の独禁法違反の事件を鑑みて、弊社は当社が競合他社との「良好な関係」の維持・強化を図ることは、当社のリスクを高めるものであると考えています。(トピック2をご参照ください。)。
なお、文化シヤッターは2021年3月末現在で時価総額の約6割に相当する現金及び有価証券を保有しています。弊社は、当社の資本効率性を低下させ、また財務リスクを高める政策保有株式を売却し、その手取金及び余剰現金を株主価値向上のために活用していただくことに期待いたします。
トピック1:議決権行使助言会社の政策保有株式に関する考え方
トピック2:シャッター業界の独占禁止法違反
2010年6月、文化シヤッターは、三和シヤッター工業(現三和HD)及び東洋シヤッターとともに、公正取引委員会から全国における価格カルテルに関する独占禁止法違反(以下「カルテル」といいます。)及び近畿地区における受注調整に関する独占禁止法違反(以下「談合」といいます。)による排除措置命令及び課徴金納付命令を受けました。なお、文化シヤッターが受けた原処分における課徴金納付命令の課徴金額は20億2,592万円です。
文化シヤッターはカルテル及び談合について異議申し立てを行い、2020年8月には主張の一部が認められ、課徴金が4,470万円減額される審決が下されました。そして、その後、文化シヤッターは談合については審決を受け入れることを発表し、2021年1月9日~2月7日まで30日間の営業停止処分を受けました。なお、文化シヤッターは、カルテルについては審決取消訴訟を提起すると発表しています。
なお、日本経済新聞の記事によれば、上記の3社は1977年及び1989年にも価格カルテルに関連した独占禁止法違反で排除勧告を受け、1995年にも警告を受けたとのことです。
このような経緯を踏まえると、当社がシャッター業界の競合他社と「良好な関係」を維持・強化することは、独禁法違反のリスクを高めるだけであるとしか評価できません。