買収防衛策を導入する経営陣
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- 本質的な買収防衛策は株主価値を向上させること以外にありません。敵対的買収の可能性は、本来、取締役の役割である株主価値向上に努めるためのインセンティブとなるべきものであり、それにもかかわらず買収防衛策を導入する目的は、取締役の自己保身のためでしょう。弊社は、自社を買収されたくないと考える取締役は、買収防衛策や後述の安定株主作りに頼らず、その期待される役割通り株主価値の向上に邁進すべきと考えます(トピックをご参照ください。)。
- 東証上場企業のなかで、買収防衛策を導入している社数(以下「導入社数」といいます。)は283社に上りますが、導入社数は2008年の460社と比較すると約4割減少しています。一方、買収防衛策に反対の議決権行使をする機関投資家は増加しています。
- (出所:東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書より弊社作成)
- (出所:株式会社ICJ資料①及び②より弊社作成)
- 文化シヤッターは、2008年に買収防衛策を導入しました。その後、3年毎に株主総会で合意を得る形で、それを継続していますが、継続を問う議案への賛成比率は、2008年の83.1%から2020年には62.5%に低下しました。
- (出所:臨時報告書より弊社作成)
- なお、賛成比率が低下し続けているにもかかわらず、当社の買収防衛策が継続されている1つの理由は、当社による安定株主作りの成果だと考えられます。例えば、当社の筆頭株主は関連企業持株会となっていますが、このように関連企業持株会、いわゆる取引先持株会が筆頭株主になっている企業は上場企業のうち、わずか1.7%に過ぎません。
- (出所:QUICK ASTRA MANAGERより弊社作成)
- 買収防衛策の導入と安定株主作りは、経営陣の保身のためにほかなりません。そして、このような株主軽視の姿勢を背景に、コーポレートガバナンスの悪い会社として、当社の資本コストは上昇し、株価のバリュエーションが割安になっていると考えられます。
トピック:買収防衛策を導入しない理由
- 東京証券取引所(以下「東証」といいます。)が2021年3月30日付で公表した『東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2021』において、買収防衛策を導入していない企業がなぜ導入しないか、その理由に関する調査結果が以下の通り示されています。
- 「買収防衛策を導入していない会社の中でその理由を説明している会社をみると、企業価値を高めることが最良の買収防衛策であると考え、現状では買収防衛策の導入を予定していないとの説明が大半である」
- (出所:東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2021より抜粋。下線は弊社)
- 調査結果で多くの企業が示したように、自社の買収を防ぐために必要なことは、安定株主作りと買収防衛策の導入ではなく、株主価値(≒企業価値)の向上です。
- 当社の経営陣には、現行の買収防衛策を廃止した上で、株主価値の向上という「最良の買収防衛策」の実現に向けて注力していただくことを強く期待いたします。